平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
少しずれた所でキラキラと瞳を輝かせて、喜ぶ宵。
「…ええ、ですからワタクシに代わり、情報を集めていただきたく思っているの。」
「なるほどね…」
「出来るかしら?」
考え込む宵に、少し心配になり尋ねる。
「大丈夫よっ、聖凪は宵を何だと思っているの?宵は風をつかさどる一族の、正統後継者なのよっ。」
「そんなの朝飯前ってものよ!!」と大見得を切った宵に、天狗達は何か言いたげで、狼狽えていた。
「大丈夫。きっと、聖凪の役に立つ情報を掴んで見せるわっ!!」
そう言って宵は、天狗達と山の方へ姿を消して行った。
その姿が見えなくなるまで、宵を見送ってからアタシも後ろを振り返る。
「さあ、帰りましょうか。」
二人とも静かに頷き、来た時と同じ様に玄武に抱えられて、都まで帰った。
近くには誰も居ない事を確認してから、簀子に下ろして貰う。
サッと御簾の内に入ると、それまで部屋の端に座っていた式が紙に戻った。
近くには、ほんの少しの女房と女童しか控えて居なかったのが、幸いだった。
「…聖凪、貴女も大変ねぇ。」
と玄武が呟くのが聞こえた。
まぁ、確かにね…。使用人の数が増えるのは、隠密行動を執りにくくなる。
内裏に入ったら、今度こそ本当に出歩くなんて、軽々しい事は出来ないでしょうね。
入内まで、後半月と少し。
それまでに解決しなければ……。
「姫様、御櫛に埃が…」
「え?」
一人の女房が、アタシの髪の毛を触ると、その女房の声を聞いた柊杞がどこからともなく現れた。
「…姫様。」
こ、怖っ!!