平安異聞録-お姫様も楽じゃない-
裳儀まで後一月となった望月の夜。父である安倍晴明(アベノセイメイ)に呼ばれ、寢殿に足を運んだ。
寢殿には父に聞きたいことがたくさんあるため、しょっちゅう足を運んでいた。
だからこの景色も、もう見慣れたものだ。
でも、こうやって父の方から呼び出されるのは本当に珍しい。
また何か不祥事が起こり、アタシの助けがいるのかしら?…なんて、それはアタシの自惚れね。
アタシは、天下の大陰陽師と称される安倍晴明の実子で、その霊力は兄弟の中でも一番強く受け継いだ。
霊力に比例して、呪いや術、加持祈祷なども亀の水を移すがごとく教えてもらった。
よって、父だけでは仕事が追い付かない時は出来る事はアタシが任せられていた。
とても簡単なものから、死が関わるようなものまで…
だから、それを母はよく思ってはいない様だけど、アタシは女でありながら頼りにされていることが凄く嬉しい。