そこはかな秘密
わざと残業するのも大変なので、時間をつぶしてからまた会社に戻る。
消えてしまった明かりを確認してオフィスフロアに降り立つと、自分の部署まで向かう。
コツコツとヒールの音をたてて窓際まで向かうと、くるりと振り向いた。
そしてそこには予想していたとおりに、彼がいた。
「………こんばんは」
にっこり笑った顔は爽やかで、優しい。
「どうして私が来るってわかったの? 」
「あなたのことなら、何でも知っているからですよ」
だってこのことは、猪野ちゃんとしか話していないのに。ぞくりと背中に悪寒が走る。
そんなことは知らないで彼は優しい笑みを浮かべる。
「今日は絶対会えるとわかっていました」