そこはかな秘密


まっすぐに視線を合わせて見つめる彼の口から出た言葉は、ふざけているとしか思えない内容だった。


「知っていますか? どんな物も百年の時を生きれば、付喪神になるんです」


そう言って手にしたものは、一本の赤い糸だった。引っ張られて気づいたけれど、それは私の左手の小指に結ばれていたもので、結ばれた根元のほうは太く、伸びていくにしたがって細く頼りなくなっていく。


糸に手をかけて彼は顔をしかめる。


「懲りないものですね、あの人も」


糸を引くとぴんと張られたその先に、元彼がいた。


「なんでこんなところで、男と二人きりでいるんだよ! 」

「自分の会社よ? いておかしいことなんてないでしょう」


イライラと怒りをあらわにした姿は、付き合っていた頃には知りもしなかった姿で、改めて離れて良かったと思う。


「昌也こそどうしているのよ」
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