そこはかな秘密
「オレは、オマエがよりを戻したがってないかと見に来てやったんだよ」
よく見てみれば、背広姿はよれて疲れが滲んでいた。髪も乱れて目も血走っている。
「もう関係ないじゃない。こんな遅くまで待ってるなんておかしいよ」
「まだ未練あるんだろ? 今ならよりを戻してやってもいいんだぜ」
「やめてよ! そんなことあるわけないじゃない」
体を乗り出した昌也を遮るように、彼が一歩前に出る。
「あなたは彼女のことを全く考えてない。自分の都合がいいように彼女を振り回すのは止めてください」
すぱりと空気を断ち切るように、腕を振り下ろすと、びっくりしていた昌也の顔にじょじょに人間らしさが戻ってくる。
「自分で言っておきながら、オマエが居なくなったら寂しかったんだ。この前の子は思わせぶりなこと言ってたって結局ヤキモチ妬かせたくて、オレといただけだったんだよ。それにワガママでウルサイ」