そこはかな秘密
もし、私と昌也に何かあったらきっとこの人は、助けてくれる。
「オマエこそ人のこと言えんのかよ。オレは見られたけど、オマエだってこいつと浮気してたんじゃねぇの」
「自分がそうだからと言って、私達もそうだと決めつけないでください。あなたの番はもう終わりなんです。彼女は、交際期間がかぶるなんてことはしてません。これから自分が口説くので気をきかせてくれませんか」
驚きすぎて声も出ない。
「ソイツ、すげーワガママだからな」
「望むところです」
背中を向けているのに、彼が笑った気がした。壮絶な笑顔な気がする。言葉がオカシイけど。とても昌也がかなう相手じゃない。
「あーもうバカらしくなってきた。いーんじゃねえのお似合いだよオマエら」
くるりと背中を向けてひらひらと手を振って、昌也が出て行く。ドアが閉まって足音が遠くなるまで彼は動かなかった。
「……あの、ありがとうございました」