そこはかな秘密
振り返りながら、ふわりと笑う。
「きっとあなたは自分の懐に入れてしまったなら、何でも許してしまう。だから初めに言います。私は人外の者」
こくりと喉が鳴る。
「百年の時を経て命の宿った付喪神です」
しゃきんと金属の擦れる音がする。ほんの少し彼が指をすり合わせただけなのに。
「私の本体は、あなたの鋏です。ずっとあなたを見ていました」
ああ、だからか。
深夜の幽霊も、あたし達の会話を知っていることも全て。
「たとえ鋏だとしても私はあなたを愛おしいと想った。だから時を得て動けたことに感謝しているのです」
作り出された笑みの深い温かさが胸に染みてくる。
「これからもずっと、あなたと共に有りたい」