そこはかな秘密
その全部がわかってもらえなかった。
誰よりも知っていたい、誰よりも知っていて欲しい人に。
しゃきん
泣いて泣いて落ち着いてきた時、金属のこすれ合う音に似た響きが落ちた。
ゆっくり顔を上げると、ドアから姿を見せた長身の影が背中からの光を受けて、長い足をさらに長く伸ばしていた。
「声がしたから覗いてみたけれど、どうしたの? 」
逆光で顔はわからなかったものの、声からして若い男性だった。ただ社員数の多い会社であるので誰だか特定はできなかった。
「わ…忘れ物をしてしまって…」
慌てて苦しい言い訳をする。いつから聞かれていたのだろう。
「それならいいけれど……」