我那覇くんの恋と青春物語～桜沢紗希編～
「桜沢さん？」


振り向くと、そこには驚いた表情で水谷さんが立っていた。



さくらさんを知っている人がこの光景を見れば、きっと当然の反応だろう。

それでも水谷さんは冷静にこちらと警備員を二度繰り返し見て、この状況を理解したようだった。


「すみません、この子は以前ここに通っていて私の友達なんです。きっと、卒業前に学校を見たくなったんだと思います。お願いします。彼女を中に入れてあげて下さい」


物静かであまり人と話さない水谷さんが、ここまでして頭を下げてくれる。

ならば、こちらも深々と頭を下げ、精一杯できることをするしかなかった。


「・・・仕方ない。君の頼みなら」


そう言って、警備員は警備員室から入校許可証を取り出してくれた。


「ありがとうございます」


さくらさんが嬉しそうに言うと、少し照れくさそうに警備員室へと戻っていった。
< 16 / 46 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop