我那覇くんの恋と青春物語～桜沢紗希編～
水谷さんを見送ったあと、グラウンドへと行く。

そこでは野球部がユニフォームを汚し、声を張り上げて練習していた。


「ここも変わっていない・・・雰囲気もすべてあのときのまま」


グラウンドから視線を変えず、目に焼きつけるように見つめる。

彼女にとっては、この学校での一番思い出の場所はここなのであろう。


「でも、野球部が練習中じゃ、部室には行けないね」


「ううん、ここから見られただけで・・・いい」


目を閉じて軽く一礼し、彼女はグラウンドに向かって頭を下げた。


「もう、いいの？」


「うん。グラウンドはね・・・ねえ、教室に行こ」


彼女は上目遣いでこちらを見てきたので、少し恥ずかしくなり目をそらす。

返事を待たずに彼女は歩き出し、恥ずかしながら後についていった。


「あれ？」


いつもの教室ではなく二年生の教室へと入っていったので、少し拍子抜けたような声が出る。


「もう、あなたは三年生になって教室が変わっているかもしれないけど、私の教室はここのままなんだから」


そうだ。



ここは二年生のクラスのときの教室だった。


「教室なんてどこも似たようなものだと思ったけど、なんか妙に懐かしいや」


中に入ると、同じ学校の教室なのに懐かしさに包まれる。



そして、あのときの二人の時間が戻ったみたいだった。
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