我那覇くんの恋と青春物語~桜沢紗希編~
「あっ、夢とかそんな大袈裟じゃなくても、例えば卒業したらどうしたいとか、そんなことでもいいの」


「うーん、いきなり聞かれても・・・・」


「そうだよね、突然すぎるもんね」


彼女は舌を出して、小さく笑う。



転校する前はこうして会って、話してということが学校の一部で当たり前のようにできた。

今、隣の席で笑っている彼女はうちの学校とは違う制服を着ていて、それがもう当たり前ではないことを物語っている。



二人の距離は、気軽に会えないくらい離れている。



あのときの当たり前がどんなに有り難いものだったか、こんな形で痛感することになるとは思ってもいなかった。


「さくらさんは?」


「えっ」


「さくらさんは、夢とかあるの?」


彼女は教壇のほうをじっと見つめ、小さく深呼吸をした。


「夢って言えばいいのかな・・・好きな人の傍にずっといたいな・・・今は遠くて、気軽に会えないから」


「それって・・・」


「早く春にならないかな。そしたら・・・」


こちらをじっと見つめる眼差し。

こちらも視線をそらさずに、彼女を見つめる。
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