我那覇くんの恋と青春物語~桜沢紗希編~
同じことを考えていたんだ。



分かっていても口に出してはいけない、そう思っていた彼女の口からこぼれてしまった想い。



心が通じ合える。



その言葉の意味が、形になった気がした。


「俺もさくらさんに会いたいよ・・・これから毎日会おうよ。俺、そっちに行くから」


彼女の息遣いが耳元で小刻みに繰り返される。



彼女の胸の鼓動が、一つ一つはっきりと分かる。



彼女を力強く抱き締めた。



それは彼女が辛い思いをしているだとか、悲しませたくないという感情ではない。

ただ彼女が好き、それ以外何もなかった。


「学校はどうするの?」


彼女は優しく問いかけてきた。

優しいが、それは現実のことだった。

卒業間近というだけで、まだ卒業はしていない。

その間も学校は・・・ある。



背中に回っていた手が一瞬強く握ったと思ったとき、彼女は少しこちらから距離を置いた。


「決めた・・・明日も会おう。今日からお姉ちゃん家に泊まって、前の学校に会うとか色々言って来るから」


「けど・・・大丈夫なの?」


「もう、決めたから。私だって・・・あなたに会いたいもん!」


そう言い、今度は彼女から抱きついてきた。



彼女の決意に、かける言葉はなかった。


「もう、こんな時間だから・・・帰ろうか」


それは、明日も会えるという思いからの言葉だった。
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