我那覇くんの恋と青春物語~桜沢紗希編~
「よう、また暗い顔になっちゃって、どうした?」


言葉とは裏腹に、笑顔で雅が近づいてくる。

コウは・・・いないみたいだな。


「昨日、さくらさんと会ったんだ」


「他所の学校の子が来たって話・・・あれって桜沢さんのことだったんだ」


「ああ。さくらさん、卒業前に学校を見ておきたいって言ったから。それで、二年のときの教室行って・・・」


「行って?」


「・・・抱き締めた」


「お前にしちゃ、すっごく進歩したねえ」


雅は驚き、顔の前で小さく拍手をする。

ここまでだったら、このことを笑顔で話せたのだが・・・


「でも・・・夜の電話では『ごめんなさい』って。『全部忘れてくれ』って・・・俺、分かんねえよ」


さすがの雅も俯き加減になり、何も言葉をかけてこなかった。

これから、どうすればいいのだろう・・・・


「お前、答えは出てるじゃないか」


どこからともなくコウが現れた。

俯き加減だった雅と二人で驚いたが、そんなことはお構いなしと間に入ってきた。


「答えって・・・」


「桜沢さんを抱き締めたんだろ?それがお前の答えじゃないか。それとも、お前は何も思っていない女の子を抱き締めるような男だったのか?」


右手で拳を作り、胸をぐっと押し当ててきた。


「あとは、覚悟だけだね」


それに真似るように、雅も拳を胸に当ててきた。
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