我那覇くんの恋と青春物語~桜沢紗希編~
放課後になり、まだ迷っていた。



雅やコウに言われ、『覚悟』というものを自分なりに考えた。

それは難解のパズルか迷路のようで、出てくる考えが一つ一つのピースに当てはまるのか、進んでいる道が前に進めているのか分からない。

そしてまた悩み、迷ってしまうのだ。



ロッカーを出て、正門へと向かう足取りが重い。


「・・・我那覇一樹くん・・・」


一瞬、自分の名前を呼ばれたような気がして、慌てて周りを見る。

特に呼ばれるような人もおらず、小さく溜息をついて歩き出す。


「あの、我那覇一樹くんって、ここの生徒だと思うんだけど知らないかな?」


間違いなく自分の名前だ。



正門を見ると、一人の女性がどうやら声の主のようだ。

正門から出てくる生徒に同じ質問をし、こちらを探している・・・

身に覚えがないのであまりいい気はしないが、探しているということは何かあるのだろう。


「あの・・・僕が我那覇ですけど」


声をかけている女性に近づき自ら名乗り出ると、少し驚きはしたものの、「ふうん」と呟きながらこちらを見つめてきた。



その視線が初めて会ったとは思えず、何かが胸の奥に引っかかっているようなもどかしさを感じる。


「よし。じゃあ、家まで送ってくわ。乗って」


後ろにあった車のドアを開け、中を指差す。

初対面の人、しかも女性にそういうことを言われて、「分かりました」と素直に乗るのは雅くらいだろう。


「あの・・・」


「あっ、ごめん。私は桜沢姫希(きき)。桜沢紗希の姉よ」


胸の奥のもどかしさが、一気に消え去っていった。

言われてみると、確かにさくらさんに似ている。


「道は君が指示してね」


まだ返事をしていないのに姫希さんは運転席に座り、エンジンをかけた。
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