我那覇くんの恋と青春物語~桜沢紗希編~
「そんなに紗希のことが好きなの?」


シートに寄りかけていた背中が前に出る。

慌ててしまい、思わず咳き込んでしまった。


「いや、まあ・・・」


「何、そのいい加減な返事は?本当に紗希のことが好きなの?」


教室で言われたコウと雅の言葉を思い出す。


 それがお前の答えじゃないか

 あとは、覚悟だけだね


答えは出ている、あとは覚悟だけ・・・


「好きです。何があっても好きです!」


口元をきつく結び言い切った。



今まで自分ははっきりさせてこなかった。



だけど、今は違う。



はっきりとさせなければいけないのだ。


「分かった・・・紗希は今私の家にいるから、あとであなたの家に連れていくわ」


「本当ですか」


さくらさんに会わせてくれる・・・


「ただし、一時間だけよ」


「そう・・・ですよね」


一時間だけでも、今の二人の状況では有り難かった。

そう思い、前を向く。


「その一時間、あなた次第よ・・・これ以上、紗希を泣かせちゃ駄目だぞ」


静かにと、だけど力強くはっきりと「はい」と返事をした。
< 28 / 46 >

この作品をシェア

pagetop