我那覇くんの恋と青春物語~桜沢紗希編~
二人の距離
部屋で落ち着かずに待っていると、玄関の呼び鈴が鳴り響いた。

姫希さんと別れてから一時間くらい経っているので、恐らく呼び鈴を押した主は・・・


「あっ、こんにちは」


玄関を開けると、そこには予想通りさくらさんが立っていた。

後ろでは姫希さんが「頑張れ」と声に出さず口だけ動かし、車でどこかに行ってしまった。


「とにかく上がってよ。外じゃ寒いでしょ」


さくらさんは「お邪魔します」と言い、靴を揃えて中に入ってきた。

誰も家にはいないが、少し足音を気にしながら部屋へと案内する。


「今、飲み物とか持ってくるから、ちょっと待ってて」


「あっ、いいの・・・気使わなくて」


袖口を掴まれ、部屋のドアの前で引き止められる。


「それに・・・そんなにゆっくりできないから」


二人に与えられた時間は・・・一時間のみ。



この一時間、今までなら何気ない会話などで良かったのかもしれない。

しかし、今、何を話せばいいのだろうか。
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