我那覇くんの恋と青春物語~桜沢紗希編~
夜ももう夜中になろうとしていた。



電話を目の前に置き、ただひたすらさくらさんからの電話がくることを待った。



彼女はもう一度、絶対に電話をしてきてくれる。



根拠などない。

だけど、彼女を信じる想いが、それが今日だと感じたのだ。



電話の着信音が鳴る。



すぐに手をつけたが、そこで大きく深呼吸をした。

そして、気持ちを落ち着かせ、その電話に出た。


「もしもし・・・桜沢です」


「あっ、さくらさん」


その声を随分と久し振りに聞いた気がする。



その声が隋bんと懐かしく感じる。


「ごめんなさい、こんな時間に・・・ずっと、電話しようと思ってたんだけど」


「ううん、全然平気だよ。でも、大丈夫だった?その・・・お父さんとのこと」


「うん・・・でも、すっごく怒られちゃって」


落ち着かせたはずの気持ちを、もう一度落ち着かせようとする。

胸の鼓動が鳴っているのが分かる。



目を閉じて、彼女の姿を思い浮かべる。

その横に自分を立たせることで、彼女の言葉はしっかりと耳に入ってこれそうだ。
< 39 / 46 >

この作品をシェア

pagetop