いつでもお傍に
いつでもお傍に
慌てて私を迎えに来たであろう彼女の足音に、私はため息をこぼした。
勿論このため息は呆れからくるものではなく『相変わらずそそっかしいお嬢さんだ』と微笑ましく思ってのものだ。むしろ親愛だ。
彼女もそれは知っているはずなのだが、私が笑うことをあまり嬉しく思っていないらしい。
「ちょっ…また笑ってますよね!」
やはり。
全速力で戻ってきたのか肩で息を切らしながらも私へと手を差し伸べる彼女は、心底不満そうな顔をしている。
「可愛いなあって思ってのことですよ?いつも言ってますよね」
差し伸べられた手に手を重ねて共に歩き出しながら、私は肩を竦めた。
時間に余裕がないのかいつもより更に足早で廊下を駆け抜ける彼女の横顔を見つめ、また思わず頬が緩んでしまう。
毎朝きちんと斜めに流して整えている前髪は汗で崩れ、額には光る粒。
眉間には皺を寄せており、口元をきゅうと結びきっている。
ああ、なんて可愛らしいのだろう。
……おっと、気付かれてしまったらまたこのお嬢さんが拗ねてしまう。
自覚しているだけに重ねていない方の手で口元を抑えて、彼女に気づかれないよう努めた。