いつでもお傍に

「……だって。朝、来る途中も余裕な顔して笑ってませんでした?」

 昼休みの屋上。
 何やらじっとりとした目線を感じて真意を訊ねてみたところ、ある意味予想通りの答えが返ってきた。

「だからね、可愛いお嬢さんだなって思っての事ですから」
「むー……」
「一生懸命なのはいいことですよ」
「いや……一生懸命の使い道間違ってますから私…」
「そうですか?」
「朝から無駄な体力使いまくってますから…」
「朝の運動は全身への血行をよくして頭の回転もきっと速くなりますよ」
「……慰めになってませんて…」

 サンドウィッチを口に含んでもきゅもきゅと噛みしめながら拗ね始める彼女は、まるでリスやハムスターのように可愛らしい。
 私と彼女が出逢ってまだ2年。
 焦がれていた会社ということで尚更大事にしているはずの社員証を朝持参するのを忘れることが、当初から多々あった。そこがそそっかしいお嬢さんのままだ。
 私にしてみたらそういうところが可愛いのだけれど、そう言うとやっぱり拗ねてしまう。

「どうしてそんなに嫌がるんです?」
「だって……」

 私を撫でながら膝を抱えた彼女は、耳まで真っ赤にして呟いた。

「いつまでも子ども扱いされてるみたいで恥ずかしいし、……嫌です」

 ――――ほら、やっぱり私のお嬢さんは可愛らしくて仕方ない。























「私」=お嬢さんの社員証ケースでした。
社員証は忘れたことに気が付いた瞬間が、焦りの最高潮です。
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