僕から、キミへ~anotherstory~
課題は出されていないので、
夕ご飯を食べ終えたあたしは早速編み物に取り掛かる。
まずは買ってきたテキストを見て学ぶ。
初心者でも出来る、と表紙に書いてあり、
尚且つ評判が良いって書店員さんも聞いたら言っていたし。
信頼出来るテキストだ。
「ハルナー?また課題?」
「ううん、違うよ」
部屋に入ってきたお母さんにテキストを見ながら答える。
お母さんは覗き込んで声を上げた。
「ハルナが編み物なんて珍しいわね。出来るの?」
「なんとか頑張ってみる」
「何を編むのか知らないけど、血まみれにしないのねー」
「ホラーなこと言わないでよ…」
まぁ不器用なあたしだから、
血まみれのマフラーってのもあり得ない話じゃない。
…ちゃんとテキスト読み込まないと。
「誰に編むの?カイくん?」
「うん。
クリスマスプレゼントにするつもりなんだ」
「何を編むの?」
「マフラー。
今日風邪引いて早退しちゃったから、
これ以上冷やさないようにしなくちゃいけないなって」
「そう。
じゃあ頑張るのよ。
ハルナこそ風邪引かないようにね」
「うん!
ありがとう、お母さん」
あたしはテキストを見て必死に編み始める。
最初は難しかったけど、慣れたらサクサク編めた。
「よーし!一気に編んじゃおうっと」
誰かに向かって宣誓したあたしは、
テキストを閉じて編み始めた。
隙間なく…ピッチリ…綺麗に。
心を込め、編んだ。