僕から、キミへ~anotherstory~







課題は出されていないので、
夕ご飯を食べ終えたあたしは早速編み物に取り掛かる。


まずは買ってきたテキストを見て学ぶ。

初心者でも出来る、と表紙に書いてあり、
尚且つ評判が良いって書店員さんも聞いたら言っていたし。

信頼出来るテキストだ。





「ハルナー?また課題?」


「ううん、違うよ」




部屋に入ってきたお母さんにテキストを見ながら答える。

お母さんは覗き込んで声を上げた。




「ハルナが編み物なんて珍しいわね。出来るの?」


「なんとか頑張ってみる」


「何を編むのか知らないけど、血まみれにしないのねー」


「ホラーなこと言わないでよ…」




まぁ不器用なあたしだから、
血まみれのマフラーってのもあり得ない話じゃない。

…ちゃんとテキスト読み込まないと。





「誰に編むの?カイくん?」


「うん。
クリスマスプレゼントにするつもりなんだ」


「何を編むの?」


「マフラー。

今日風邪引いて早退しちゃったから、
これ以上冷やさないようにしなくちゃいけないなって」


「そう。
じゃあ頑張るのよ。

ハルナこそ風邪引かないようにね」


「うん!
ありがとう、お母さん」






あたしはテキストを見て必死に編み始める。

最初は難しかったけど、慣れたらサクサク編めた。





「よーし!一気に編んじゃおうっと」





誰かに向かって宣誓したあたしは、

テキストを閉じて編み始めた。

隙間なく…ピッチリ…綺麗に。




心を込め、編んだ。








< 20 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop