恋色桜
後から知ったことだが、私は地図を逆に見ていたらしい。周りには人影がなく、とても静かだ。
「どうしよう…これじゃ間に合わない。」
知り合いはいないし、両親は仕事でだれとも連絡が取れない。
「どうしたの?」
人影のない中庭。人なんていないと思っていたのに、案外人はいるもんなんだ。
「私新入生なんですけど、迷っちゃって…。体育館ってどこですか?」
話しかけてくれたのは、やさしそうな男の人。制服だから、たぶん先輩。あ、でも、ネクタイの色が違う?なんでだろう…。
「あ、入学式か。こっちだよ、おいで。」
ニコッと笑いながら、私の手を引く先輩。入学早々にすっごくかっこいい先輩を見つけてしまった。何て名前なんだろう…。
「冬賀(とうが)!」
気がついたら、体育館に着いていた。きれいなお姉さんがこっちに近づいてくる。
「あ、葵(あおい)。この子新入生だから。」
そのきれいなお姉さんと冬賀先輩(?)は知り合いみたいだった。
「了解。今ならまだ間に合うから。行こっか、美咲(みさき)。」
え、私の名前なんで…?きれいなお姉さん、よく見たら…。
「あ~!!」
気づいた時には、入学式は始まっていた。

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