恋色桜
きれいに見えるはずだよ…。あの人は、幼い頃からの憧れの人。
「葵お姉ちゃん!」
そう、あの人は私のお姉ちゃん。幼い頃から、私が理想とする人。美人でやさしくて、でもちょっとおっちょこちょいでかわいくて…人気者だったお姉ちゃん。
「あ、美咲。入学式終わったの?」
長い髪を耳にかけ、うれしそうに話すお姉ちゃん。
「うん、今終わった。ねぇ、お姉ちゃん今まで何してたの?家には帰ってこないし…。」
1年前、お姉ちゃんは急に姿を消した。”大丈夫、そのうち会えるよ”両親は、それ以上何も言わなかった。それは、こういうことだったのか…。
「…。ここ寮があるでしょ?だから、しばらく1人暮らしすることにしたの。ほら、お母さんたちも、寮だったって言うし!」
気のせいか…お姉ちゃんが少し悲しそうな顔をした気がして、それ以上聞けなかった。


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