ロールキャベツは好きですか?

「向井、お先」

俺は結局、それ以上、ラーメンを食べることができず、社食をあとにした。

自分のデスクに戻ると、主任は外出の準備をしていた。

「お帰り。田島くん」

俺に気づいた主任は顔を上げる。

「ただいま戻りました」

デスクに座るといっきに疲れが押し寄せる。
まだお昼休みなのに。

5時間は働かないといけないのに。

「田島くん。ちゃんと食べてるの?最近、やつれた感じがする」

さすがに主任の観察力にはかなわない。
俺も痩せてるなと鏡を見て思ったところだ。

「あんまり食欲ないです」

俺は正直に言った。隠していてもこの人には嘘がバレる気がしたからだ。

「風邪かな?朝晩が冷え込むようになってきたからね」

「そうかもしれません。気をつけます」

季節私変わり目っていうのも、多少はありそうだけど……。

主任のことでモヤモヤするなんて、言えないか。

そんなことをすれば、主任を急かすだけだ。

今ですら、主任はこんな状況に戸惑っているのに、そんなことできない。

かつての想い人と告白してきた部下。
そんな状況に、挟まれている主任に。
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