ロールキャベツは好きですか?

そんな俺に奴はニヤリと笑う。
それは奴が何かを企むときの仕草だ。

「本当に感謝する気ある?田島」

「あります」

「だったら、高校の同窓会来てよ」

ハッと息を呑んで、俺は向井を見つめる。

向井は真剣な目で俺を見ているから、このことを冗談にするつもりはないらしい。

俺は唇を噛み締めて、向井から若干目を逸らした。

「行かねぇって言ってんだろ」

「なんで!?みんな待ってる。玲奈(れいな)も……」

「……その名前言うなよ」

「ホントにあの子、あなたに会いたがってるの。今旦那さんとも離婚しちゃって……」

「……知るかよ。自業自得だろ。そんなの」

嫌悪感いっぱいに言った言葉は恐ろしいほど、低かった。

俺の隣のデスクで声を聞いたらしい主任が息を呑む気配がした。

俺らの周りに漂う剣呑な雰囲気に周りも静まり返ってしまった。
その気まずさに、向井はため息をつくと、潔く身を翻した。

「また、説得にくるよ」

「来なくていい」

俺の言葉に返事はせず、向井は営業部のフロアを颯爽と出ていった。
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