ロールキャベツは好きですか?

悩みながらも、シチューを頼んだ。
それが来るのを待ちながら、私たちは家族の話をした。

田島くんの家族は、ご両親と歳の離れた中学生の妹さんらしい。
あと、妹さんと同い年の御年15歳になるカメ。

田島くんは夫婦漫才が得意なご両親や、必ずどこかでドジをやらかすおっちょこちょいな妹さんのお話を面白おかしく話してくれた。

私はあえて、玲奈さんのことは聞き出さなかった。
こんなに家族のことで穏やかに話す田島くんの笑顔を崩したくはなくなったから。

だけど。

目の前にシチューや、お惣菜やらが置かれて、一度、会話が途切れると、彼は改まった様子で口を開いた。

「主任が今日、誘ってきたのって、昼休みのことが気になったからですよね?」

勘付かているだろうな、とは思っていたから、私も改まって、彼に謝った。

「……ごめん。いつもとあまりに様子が違ったから、ちょっと気になっちゃった。でも、話したくないなら……言わなくていいよ」

私の言葉に彼は少し考える素振りをしたが、やがて何かを決心したように、一人頷いた。

「やっぱり、話します。隠し事なしで、あなたと向き合いたいから」

その言葉に、心がスッと吸い込まれた。心が彼のものにされたことを、はっきりと自覚した。

真剣な彼の表情に、私も姿勢を正した。

「主任。今からする話は、俺のことを受け入れるか断るかを判断する材料にして下さい」
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