ロールキャベツは好きですか?
食事を終えて、お手洗いから戻ると、田島くんが会計を済ませてくれていた。
二人で店を出て、もう何回一緒に帰ったんだろう、と思える私のマンションへの道を一緒に歩いた。
彼は私の左斜め前にいる。
こっちを見なくても、歩調は私に合わせてくれる。
思えば、私、田島くんのいい所は幾らでもあげられる気がする。
陽気。真面目。一途。誠実。頑張り屋。観察力の鋭さ。ほのぼのとした目。たまに惑わされる甘い情熱。こうやって歩幅を合わせてくれることも。
じゃあ嫌いなところは……?
彼の背中を見てみても……思いつかない。
「主任……どうしたんですか?考え事してるようですけど」
ふと回りを見れば、もう目の前は私のマンションだ。
「……何でもない。ごめん」
あなたのことを考えてた、なんて言えない私は、俯いた。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、田島くんはフッと笑みをこぼした。
「今日はありがとうございました。この話今まで誰にもしたことがなかったから、聞いてもらえてちょっとスッキリした気がします」
じゃあ俺はこれで。
身を翻した彼の背中。
私は思わず名前を呼んで呼び止めた。
彼は不思議そうに振り返る。
「田島くん。ねぇ、部屋に上がらない?コーヒーでも淹れるから」