ロールキャベツは好きですか?

彼女が苦笑した。

主任は予想以上に、冷静な表情をしている。
俺に抱かれてもいいと言ったときは、双山部長との叶わぬ恋に、壊れてしまったのかと思った。

そういう訳でもなさそうだ。
そもそも投げやりになっている訳じゃないと否定したのは、主任だし……。

「解せない……って顔してるわね」

主任を見つめていたから、こっちを向いた主任と目があって、微笑まれた。

俺は上手く返せない。
さっきからずっとフリーズしてる。

どうして主任が突然あんなことを言い出したのか。

視線をカピバラのマグカップに戻してから、口を開いた。

「……主任。俺のこと、好きですか?」

やっと言えた言葉はこれ。

今一番、気になっていたことだ。

自分に自信があるわけじゃない。
仕事だって、主任のほうが断然できるし。
顔だってそこまで格好いいわけでもない。

ただ、知っていてもらいたかった。
主任のことを想っている人間がいるということを知っていてもらいたかった。

玲奈のことで、傷ついて。
もう、恋なんてする気はなかったのに。

主任に、一目惚れだった。
会えば会うほど好きになった。
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