ロールキャベツは好きですか?
「……好き、なのかもしれない」
隣を見ると、困惑した表情で、マグカップに口をつけている主任がいた。
不器用な主任は、自身の心の揺れに、戸惑っているらしい。
「隠し事なしに、あなたと向き合いたいって言われたとき……心が完全に捕まったな、って思った」
主任は目を合わせてくれないけれど、その横顔は赤く染まっていた。
「……主任」
俺はマグカップをテーブルに置いて、主任の頬に手を添えた。
主任は特別抵抗もせず、頬を預けてくれる。
反対の手でその肩を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。
主任の腕が、背中に回る。
「……っ」
心臓が痛いほどの喜びが貫いた。
腕の力を強くする。
「ねえ田島くん」
囁く声がすぐ隣で聞こえる。
彼女の吐息が俺の髪を揺らす。
「私もちゃんとあなたと向き合いたいから。聞いてくれるかな?私の過去を」
身体を離して、その目を覗き込んだ。
真剣な目で俺を見つめてくる彼女の瞳には、同じくらい真剣な顔をしている俺がいた。
「もちろんです」