ロールキャベツは好きですか?
よくよく思えば、俺は玲奈と別れたあの日のことだけを思い出して、それまでのただ輝くだけの思い出までも、
見えないように、古新聞で包んで、心の引き出しの一番奥にしまいこんでしまっていた。
『終わりよければ全てよし』なんて言葉はあるけれど、それって裏を返せば、終わりが良くなかったら、全て台無しってことじゃないのか?
なんだかもったいない。
別れ方がひどかったからといって、その他の思い出まで憎しみに埋もれてしまうなんて。
「しばらくして、私は双山部長と一緒に営業に行くことになってね。
それまでで、一番大きな仕事だったの。
寝る間も惜しんで資料準備して。
……がむしゃらだったな、あの頃。
粘り強い交渉の末に、契約を頂いたときは本当に嬉しかった。
双山部長も私に褒め言葉をくれて、部長の奢りで二人で散々お酒を呑んだの」