ロールキャベツは好きですか?

店に、指定時刻の10分前に行くと、すでに奴は来ていた。

「ごめん。待たせた」

声を掛けると、忍は顔を上げた。

「ああ、来たか、祈梨。俺も今来たとこだ」

私は彼の目の前に座り、ブレンドコーヒーを注文する。

「忍は?」

「……じゃあ同じもので」

どこか歯切れが悪い忍は珍しい。
これはいよいよ、本格的に別れ話をすることになりそうだ。

「私、まだ少し仕事が残っているの。話なら手短にお願いします」

「ああ。忙しいのに、悪いな」

飲み物が来るのを待ってから、私が先に口を開いた。
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