ロールキャベツは好きですか?

「誰か紹介しろよぉ」

「あ~それじゃあまぁ、可愛げはないけど、こいつどうだ」

「はぁ?可愛げないってどういう意味よ!?」

手に持っていたビールのグラスをテーブルにドンと打ち付ける。
よりにもよって、こいつは自分の元カノを指差してきた。
そして、なんだ、可愛げがないって。

「ひどい言われようだわ」

「残業、休日出勤を平気でしていて、成績トップクラスの女のどこに可愛げがあるんだよ」

……まぁ、ごもっともだけど。

付き合っているときも、残業と休日出勤でデートすっぽかしたもんね。

「渡邊ちゃんかぁ。確かに可愛さはないだろうけど、かっこいいよなぁ。渡邊ちゃん、俺のなんかどう?」

「丁重にお断りさせていただきます」

「うわ、即答!」

私と伊丹のやりとりに笑い声が起こった。

「いいじゃん。渡邊ちゃん、独身同士仲良くしよーよ」

「却下。今は仕事が恋人ですから」

嘘をつくときはサラリと言うのがコツ。

仕事も確かに大切だけど。
今は祥吾くんっていう恋人がいる。

「つれないなぁ。渡邊ちゃん」

「渡邊ちゃんの口癖だよね。"仕事が恋人"は」

「仕事以外の恋人は?いないの?」

「…………いない」

いないと言って、伊丹から突っつかれるか。
いると言って、恋バナ好き女子から突っつかれるか。

どちらが辛いかを考えたあと、「いない」と答えた。
それがいけなかった。

「何、今の間!!」

「いるよね!?絶対いるよね!!」

「社内のひと!?写真ないの??」

女子社員が男子社員を押しのけて私の周りにドッと集まった。

「いないって言ってるじゃない」

「嘘!絶対いるよね!!」

こうなったら女子はあとに引かないよね。
私が恋人の名前を口にするまでとことん攻められる。
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