ロールキャベツは好きですか?

「……疲れた」

「だろうな」

飲み会はお開きになり、駅へと向かう道すがら。
ぼやく私と苦笑する忍。

女子社員の猛攻撃にも負けず、一切口を割らなかった私は、一次会でヘロヘロになり、二次会には参加しなかった。

そして何故かそんな私についてきた忍である。

「珍しい。沈着冷静が売りのお前が慌ててた」

笑いをこらえている奴をしっかり睨みつけてやる。

「そもそもあんたが伊丹に私を紹介しだすからでしょ?」

「恋人がいるなら、お前だったらちゃんと断るよな、って思って」

視線を逸らした忍の目を追いかけ、顔を上げる。
そこにはもう、笑みはない。

「確かめたかったんだ、お前に恋人がいるのかどうか」

「……確かめて、今更何になるの?」

訝しくて、思わず問う。
彼は少し迷った顔をしたけれど結局言った。

「田島だろ?相手。帰りにどっか食べに行こうって話し合ってるの、聞いちまった」

図星だったから、何も言えずに苦笑した。

「社内恋愛は上手く隠せ。そうでないと、互いが悲しい結果に終わる」

「忍……」

「特に相手は直属の部下だろう。別れろとは言わないけれど、上手くやれよ」

忍が言いたいことはわかる。

うちの会社は社内恋愛を良くは思っていない。
同じ部署で働けはしないだろう。

離ればなれで傷つくのは、私たちだと忍は危惧しているのだ。

「忠告してくれてありがとう。気をつける」

私の言葉に、忍は小さく頷いた。
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