ロールキャベツは好きですか?

「今……なんつった!?向井」

「だから、私と寝ない?って言ってんの!」

やけになるみたいに、向井は声を荒げた。

いやいや。
逆ギレされても困るよ。向井さん。

「寝ない?って?意味わかってて言ってんの?お前」

「わかってる!私だってそこまで子供じゃないわよ!」

「わかってるなら、いいけど。でもそんなこと言っちゃっていいわけ?」

『私と寝ない?』なんて。
結婚直前の女が、婚約者以外の男に言うもんじゃないよな、そもそも。

「いいの!双山さんから許可もらってるもん!」

「はぁ?」

許可って、何だよ!許可って!!

「何があったか知らねえけど、話ぐらい聞くから、来いよ」

ひっつき虫みたいに、離れない奴を無理やり引き離して、自分で立たせた。

訳わからないし、このまま放っておくわけにもいかないから、俺はとりあえず、誰もいない夜の公園に入った。

トボトボと後ろをついてくる向井に、俺は自販機でホットカフェオレを買って渡す。

「ん。とりあえずこれ飲んで落ち着け」

自分用の微糖の缶コーヒーも買って、夜の公園のベンチに座る。
ホットの温もりがかじかむ手に痛い。
本当は寒いから喫茶店かどっかに入りたいけど、外灯の明かりで見える向井の横顔は化粧崩れがひどいため諦めた。
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