ロールキャベツは好きですか?

すでに祈梨さんは帰ってきていた。

「お帰り。祥吾くん」

「ただいま」

心なしか祈梨さんが清々しい顔をしている。
笑顔が晴れやかだ。

「なにか、いいことあった?」

俺のコートをハンガーに吊るしてくれる祈梨さんに尋ねる。

「わかる?」

「わかるよ。何となくだけど」

二人がけのソファに座る。
そんなに広いソファじゃないから、身体はすぐに密着して、右側に祈梨さんの温もりを感じる。

「吹っ切れたのよ。双山部長のこと」

「え?」

吹っ切れた?双山部長のこと整理できたってことか?

4年間の片想いにケジメをつける。
それは簡単にできることじゃない。

時間がかかるのは仕方ないと覚悟していた。
だけど、思った以上に早かった。

「忍がさ、教えてくれたの。双山部長が向井さんと結婚する理由」

「出世目的の政略結婚ってやつですか?」

何だ、聞いたんだ。
俺が口止めしてても、誰からともなく、話は聞くだろうって思ってたけど。

「祥吾くんも知ってたんだね」

「まぁ、一応」

隠していたのを誤魔化すみたいに俺は苦笑いをした。
そんな俺に対して、彼女は微笑みかける。

「双山部長のその理由聞いてさ。呆れて、馬鹿みたいに思えて、一気に冷めた」

コトンって。
祈梨さんは俺の肩に頭を乗せた。

「祥吾くんと付き合ってよかったって、本気で思えたよ」
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