ロールキャベツは好きですか?
「俺も祈梨さんがいなくちゃ、誰かに恋をする気持ちも忘れていたかもしれない」
出会えてよかった。
この会社に入ってよかった。
毎日仕事は忙しいし。
上司の双山部長は最低な男だし。
それでも。それでも、祈梨さんと出会えたことほど、かけがえのないものはない。
「……こんな幸せいつまで続くだろう?」
彼女のポツリと呟いた声が微かに揺れて聞こえたから、思わずその頭に手をのせる。
「……続くよ。永遠に」
逆風が吹くときもある。
それでも、この幸せの灯りを消さないように、守らなくちゃ。
「幸せはずっと続く」
「そうね。私も続かせる努力をしないと」
膝の上に置かれた俺の手のひらに、彼女の華奢な手のひらが重なった。
祈梨さんの温もりを感じながら、俺はさっきの向井の涙を思い出した。
どうか、双山部長が健気な向井の愛に気づきますように。
あの二人のもとにも、幸せは訪れますように。