ロールキャベツは好きですか?
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side:祈梨
12月末はどの年も仕事で忙殺される。
外回り。会議。デスクワーク。
残業も休日出勤も続いているから、帰りの電車に揺られながら寝てしまうことが続いている。
足元から吹くヒーターが暖かくて、眠気が止まらないのだ。
「……主任。大丈夫ですか?」
アシスタントの曽田(そだ)さんが、私の元にコーヒーを置いてくれる。
「ちょうどコーヒー飲みたかったの。ありがとう」
カフェインが欲しかった。
暖房が効いたオフィスでは眠気が止まらないから。
それに今見ている資料は、午後に向かう皮膚科のクリニックへの営業用で、見てるだけで嫌になるような化学構造式が載っている。
低価格で高品質が売りの我が社の化粧品。
ドラッグストアやスーパーなどメインの取引先としていたけれど、最近は皮膚科の外来がある病院にも営業に出向いている。
皮膚科に来られる女性は大体肌が弱く、化粧品に躊躇してしまいがちだ。
皮膚科の先生オススメという文字がついたなら、我が社の化粧品を更に買っていただけるかもしれない。
そのためにもドクター相手にこの化粧品の素晴らしさを語らなくちゃいけないが、そこに登場してくるのが、この化学構造式。
いくら理系の学部を卒業しているからといって、この式に眠気を感じずにはいられない。