ロールキャベツは好きですか?
将来有望だと言われるあの強引課長が珍しく目の前で申し訳なさそうに首を竦めている。
最高のライバルが弱い立場にあるということがどこか小気味よくて、私は歯を見せて笑った。
そんな私に奴は怪訝そうに眉を寄せる。
「祈梨……?」
「ちょうどよかったわ、忍。私もそろそろ別れ話を切り出さなきゃな、って思っていたところだから」
持ち出したのは、別れを切り出されたときに言う私の中での常套句だ。
こうやって、彼一人に後ろめたさを抱えさすのは、フェアじゃない。
「もしかして……浮気に気づいてた?」
恐る恐るといった感じの忍に、かぶりを振る。
それに気づいていたら、佐藤さんに相手は忍だと言われてもあそこまで驚かなかったさ。
「付き合って三年の恋人がいるって知ると、周りはみんな結婚を期待する。結婚したら、今度はさも当たり前のように、子供を要求される。それが嫌なの」
「祈梨って子供嫌いだったっけ?」
「嫌いじゃないよ。むしろ、大好き。だけど、私はまだまだ仕事をしたい。家族じゃなくて仕事最優先の暮らしがしたいの」