ロールキャベツは好きですか?
会議室を出て真っ白な天井を仰いだ。
会社を辞めて、あの家を出る。
そう決めたのは祥吾くんとの電話のあとだ。
もちろん引越し先は祥吾くんには教えない。
会社の誰にも教えないし……きっと家族にも知らせないだろう。
部長との関係もきっちり終わらせなくちゃいけないし、祥吾くんも……このままでいいわけない。
言えなかった私の秘密。
それは……子供が産めない身体だということ。
このまま私とずるずる関係を続ければ、あなたは生涯子供を抱けない。
だから……別れる。
私じゃないひとと幸せになって。
子供を見つめるあなたの瞳は何よりも温かくて。
輝いていて。
そんなあなたを見るたびに、私は苦しくなる。
私がいる限り、あなたの可能性をひとつ奪ってしまうことになるから。
━━━ごめん。祥吾くん。
向井さんと抱きしめてる写真を見て、冷静になれなくなるくらい、好きだった。
きっとあれは何でもなかったんじゃないかな、って冷静になれば思えるけど。
それでも、ヤキモチをやいてしまった。
こんな感情、初めてだった。
祥吾くん。ごめんなさい。
中途半端なことをして、ごめんなさい。
好きだという気持ちに嘘はない。
だけど、私は幸せになっちゃいけないんだよ。