ロールキャベツは好きですか?

会議室を出て真っ白な天井を仰いだ。

会社を辞めて、あの家を出る。
そう決めたのは祥吾くんとの電話のあとだ。

もちろん引越し先は祥吾くんには教えない。
会社の誰にも教えないし……きっと家族にも知らせないだろう。

部長との関係もきっちり終わらせなくちゃいけないし、祥吾くんも……このままでいいわけない。

言えなかった私の秘密。
それは……子供が産めない身体だということ。

このまま私とずるずる関係を続ければ、あなたは生涯子供を抱けない。

だから……別れる。

私じゃないひとと幸せになって。
子供を見つめるあなたの瞳は何よりも温かくて。
輝いていて。

そんなあなたを見るたびに、私は苦しくなる。

私がいる限り、あなたの可能性をひとつ奪ってしまうことになるから。

━━━ごめん。祥吾くん。

向井さんと抱きしめてる写真を見て、冷静になれなくなるくらい、好きだった。

きっとあれは何でもなかったんじゃないかな、って冷静になれば思えるけど。
それでも、ヤキモチをやいてしまった。

こんな感情、初めてだった。

祥吾くん。ごめんなさい。
中途半端なことをして、ごめんなさい。
好きだという気持ちに嘘はない。
だけど、私は幸せになっちゃいけないんだよ。
< 164 / 210 >

この作品をシェア

pagetop