ロールキャベツは好きですか?
♢
side:祈梨
怒鳴りつけてしまった。
冷静に別れ話なんてできなかった。
……目の前で祥吾くんが固まっている。
その手から力が抜けていたから、私はスルスルと手首を抜き取り、ブラウスを着た。
罪悪感でいっぱいだった。
こんなの……ただの八つ当たりだ。
私が全部悪いの。
ちゃんと整理できていない中途半端な状態で彼と付き合って。
秘密があるのに、ずるずると関係を続けて。
全て私が悪いから、最後はとんでもない悪者になる。
「……それって祈梨さんの意志でやったの?無理矢理だったんじゃないの?」
「私の意志だよ」
「部長のセフレまたやるの?」
「うん」
彼の唇が歪んだ。
━━━ああ、私、あなたを傷つけてる。
でもこれでいい。
この傷を乗り越えて、幸せになって。
杏を抱っこするときのような優しい笑顔で、誰かの"お父さん"になって。
私が守りたいもの。
それはあなたの未来の笑顔だから。
「こんな上司じゃ、あなたに顔向けできないし、偉そうなこと、言えない。だから、仕事も辞めるわ」