ロールキャベツは好きですか?

いつの間にか、手から離れてしまっていた緑色の靴下をそっと握りしめる。

いつだって苦しいときは、この靴下を握りしめていた。

「私の部屋の合鍵を返してほしい」

「……持ってませんよ、今は」

「じゃあもう、捨てていいよ。どうせ、この部屋出るし」

「なんで、俺のことをそこまで避けるんですか!?」

また、手首を掴まれた。
彼はもう怒りを堪えようとしない。
力任せに手首を握られて、今度はここに痣ができそうだ。

「ダメな上司ならダメなりにやればいいじゃないですか!?どうして仕事を辞めて、家まで引っ越すんですか!?」

「そんなの……!」

そんなの……あなたを忘れるために決まってるじゃない!

そばにいれば、またあなたに甘えてしまう。

「……そんなの……」

声がしりすぼみになる。
言えないよ。
あなたを忘れたいからって。

離れないとあなたを忘れる自信がないほど……あなたが好きだ、ってことじゃない。

祥吾くんは無言で続きを促してくる。

そんな彼に耐えきれなくて、俯いた。
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