ロールキャベツは好きですか?
驚くのも無理はない。
だって、祥吾くんと私は会社の部下と上司であり、恋人同士だとは言ってなかったから。
自然と私の腕から手を離しながら、祥吾くんは頭を下げる。
「お電話があったときに、たまたま一緒にいましたので、ここまで車で彼女を送ってきました」
「わざわざ、ありがとう。田島さん」
「身内じゃないですけど、ここで待たせて頂いてもいいですか?このまま家に帰っても、きっと気になってしまうので」
律儀に尋ねる祥吾くんに、洋平は苦笑した。
「わざわざ聞かなくても、すでに田島さんは俺達の家族も同然だよ。ただ、身体は無理しないでください」
「ありがとうございます」
呆然と突っ立ったままの私を祥吾くんは腕を引いて、ソファに座らせた。
自身も私の隣に座る。
「じいちゃんは今、カテーテルの手術を受けている」
洋平と智おじさんは、おじいちゃんが倒れたときの様子を教えてくれた。
おじさんが仕事から帰ってくると、おじいちゃんは脱衣所で倒れていたそうだ。入浴しようとして、脱衣所と風呂場の温度差に心臓が悲鳴を上げたのではないだろうか、というのが洋平の推測だ。
手術が終わるのを待つ間、私は手のひらをコートのポケットに突っ込んだ。そこにはあの靴下が入っている。
冷たいそれを固く握りしめながら、私は白い壁を見つめていた。
ソファは四人掛けで、でも大人四人座れば狭くて、隣に座る祥吾くんの身体がすぐ近くに感じた。
その温もりは私の震えを抑えてくれた。