ロールキャベツは好きですか?

「……あ」

真っ先に声を漏らしたのは、智おじさんだった。

集中治療室からひとりの医者が出てきた。

「手術は終わりました。数日は入院してもらいますが、もう大丈夫です」

医師の言葉に全員の力が拔ける。

「……ありがとうございます」

「入院のための手続きがありますので、もうしばらくここでお待ちください。看護師が呼びにくると思います」

医者はにこやかに笑ってくれた。

「先生。本当にありがとうございました」

「いえいえ」

医者が頭を下げてどこかへ行ってしまうと、みんな笑顔を見せあった。
安堵のため息をつく。

「……よかったぁ」

「人騒がせなジジイだよ」

「冬なのに冷や汗かいた」

「……本当によかったです」

両手をまたコートのポケットに突っ込んだ。

……おじいちゃん、助かったって。

毛糸はやはり冷たい。

洋平は真さんに連絡をするため、席を外した。

ちょうどそのとき、看護師さんに呼ばれる。ご家族のどなたか……と言われて、智おじさんが行くのかと思ったが、私まで引っ張っていかれた。

細かい文字は見えないから、書類を書けとのことである。
慌てていたので、必需品の老眼鏡を家に忘れたらしい。

「俺はここで待ってますね」

祥吾くんに、にこやかに見送られた。
まぁ、いいか。今二人きりはちょっときまずいから。
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