ロールキャベツは好きですか?
何も言うつもりなかったのに、俺の口は勝手に言葉をついて出た。
「……でも、ついさっきまで別れ話になってました」
「およよ」
洋平さんが興味深そうに俺を見つめてくる。
「……突然、別れようって言われてしまって。仕事も辞めるって、もう辞表まで書いてて。もう少ししたら、俺の前から姿を消すらしいです。理由もよくわからなくて……」
話すうちに、ますます祈梨さんが消えそうな恐怖に駆られて、俯いた。
双山部長がつけた跡を見たときは、確かにショックだった。だけど、たぶんそれは祈梨さんが無理矢理されたんだろうと想像がつく。
触れても、抱きしめても、キスしようとしても、抵抗や拒絶を感じなかった。
だとしたら、何?
俺、何かしたかな?
「突然、別れを切り出されたか……姉ちゃんらしいや」
洋平さんは呆れたように鼻で笑って、俺を一瞥してから、自身の足元に視線を落とす。
それから思いのほか、低い声で、言った。
「なあ、田島さんは、その靴下のこと、何か姉ちゃんから聞いてないか?」