ロールキャベツは好きですか?
ピンポーン。
熱い吐息と、堪えきれずに漏れた声だけが響いていた部屋に、不釣り合いな音がした。
自分たちの世界に入っていた私たちは、その音にビクッと反応する。
「……だれ?」
居留守を使おうかと思ったが、インターホンはしつこい。
何度か連打され、私たちは渋々、体を起こした。幸い、服は脱いでないから、乱れを整えるだけ整えて、玄関を開ける。
「よう!」
不機嫌全開で扉を開けると、そこにいたのは
「洋平!」
弟の洋平だった。
「あれ?洋平さん」
後ろから出てくる、やっぱり不機嫌顔の祥吾くん。
「お取り込み中……だったかな」
笑いを噛み殺す弟に、私は冷ややかな視線を向ける。
「別にそんなんじゃない」
「うそ。首筋、歯型ついてるけど?」
え……!?慌てて、首に手を当てて隠すと、洋平はプッと吹き出した。
こんなに動揺してたら、やってました、と宣言しているようなものだ。
「いいねぇ。婚約中はラブラブで」
「それより、要件は何?」
からかう洋平はガン無視だ。
「あ、ごめんごめん。時間取っちゃ、続きできないよな!」
「洋平……!!」
「はいはい。これ、キャベツやるよ。真のご両親が大量に送ってきてくれたんだ」
手渡されたのは、レジ袋に入ったキャベツ二玉。
「あ、ありがとう。助かる」
「うん。じゃ!邪魔者は消えるわ!」
手を振りながら、洋平は帰っていった。
散々からかわれて、顔が真っ赤になったのを隠しながら、部屋へと上がる。