ロールキャベツは好きですか?

「キャベツいっぱいだね」

「ホントだ」

台所の流し台にキャベツを置くと、祥吾くんに後ろから抱きしめられた。

「ねぇ。祈梨さん」

「ん?」

「……ロールキャベツは好きですか?」

この質問は、最近の祥吾くんのお気に入り。

「好きですよ」

「じゃあ、俺のことは?」

「おんなじくらい好きですよ」

それ以上、好き。
そう言ってもらいたい祥吾くんは、頬をふくらませる。

その表情が可愛くて、私は微笑む。

好きだよ。
ロールキャベツなんかより、ずっと、大好きだよ。

でもそんな照れたこと言えないから、私はくるりと体を反転させて彼と向き合い、彼から唇を奪う。

一瞬不意打ちをくらった彼だけど、私の本心が分かっているから、ニコッと笑って、おでことおでこをひっつけた。

「素直じゃない祈梨さんにはお仕置き」

「なに?」

「今日の晩ごはん、祈梨さんにロールキャベツ作ってもらう」

予想外のお仕置きに真顔になって拒絶した。

「え、無理。私が作ったら、ロールキャベツじゃなくて、キャベツの肉巻きになる」

「失敗の仕方、おかしいだろ」

抱きしめられているから、彼の笑い声が直接体に響く。

ひとしきり笑ったら、彼はそっとキスをして、耳元で囁いた。

「さっきの続き、しようか?」

「ワン!」

うん、とは素直に言えない私の代わりに、元気なまめが返事をした。

♦♢fin♢♦
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