ロールキャベツは好きですか?
主任は一応俺の好き嫌いをざっと聞いてから、何品かを注文した。
呑みに行こうとか言っていたくせに、お酒は頼まなかった。
ご主人は注文されたものを作るため、厨房に入っていくのを見届けてから、俺は口を開いた。
「で?さっきご主人がおっしゃっていた『いつもの子』って彼氏ですか?」
ご主人が出してくれたほうじ茶を飲んでいた主任は湯のみを離して、困ったように微笑んだ。
少しばかりの逡巡のあと、主任は首を傾げながら首を横に振った。
「彼氏、だったひと」
わざわざ過去形に言い換えた。
誤魔化すこともできるだろうに、そうしないのは、この人の不器用さだと思った。