ロールキャベツは好きですか?
もちろん、主任にとって俺は単なる部下で、強いて言うなら、カピバラに似ているからかいがいのある部下で。
それが分かっているから、恋愛感情は一切表に出さなかったけれど。
「過去形……なんですね」
「さっき別れてきたからね」
サラリと言われた言葉に思わず目を剥いて、主任を見ると、彼女はこれでもかというほど艶やかな笑顔を見せてくれた。
「さっき別れたって……じゃあもしかして所要って……」
「うん。別れ話」
困惑する俺をよそに、彼女の言葉は淡々としていて、まるで他人事のようだ。
それに俺に向ける笑顔はとても清々しいことも謎だ。
これが別れ話を終えたあとの人間が見せる笑顔か?
「……主任。別れたかったんですか」
「別れたかったっていうか、相手が結婚するらしいからね」
「はぁ?結婚?」
「うん。だから、幸せになるよう言って帰ってきた」
……彼氏が他の女と結婚する。
嫉妬で狂いそうなものなのに。
この人は涼しい顔をしている。