ロールキャベツは好きですか?

「はい。お待たせ~」

ご主人が出来上がった料理を持って、厨房から出てきた。

「ほうれん草のおひたし。肉じゃが。天ぷらは旬のさつまいもとかぼちゃね。松茸ごはんと……」

料理の品名が紡がれるとともに、目の前に置かれていく料理。

多忙だと言い訳をして、コンビニ弁当で夕食を済ませていたから、家庭料理のようなこれらの料理は、とてもごちそうに見えた。

「今日も美味しそう~!」

いつもの作ったような笑顔が、張り詰めたものが緩和されたかのように、崩れた。

料理を前に途端に、無防備になった笑顔に、グイッと俺の心が持っていかれる。

「あと、これはロールキャベツ。おっちゃんのサービスさ」

「わーい!!」

いつものキャリアウーマンはどこかに身を隠し、子供のように、手を叩いて喜んだ主任は瞳をキラキラさせている。

小鉢に入ったそのロールキャベツからは、ホクホクと湯気が立っている。

コンソメの優しい香りが俺の胃をぐぅと鳴らせた。

「では、ごゆっくり」

ご主人は再び厨房へと消えた。

「田島くん。食べよう!」

爽やかな笑顔でそう告げられる。

この人は笑顔一つで様々なレパートリーを持っているな、と思った。

そして、同時に思う。
この人の笑顔以外の顔を見たことがない、と。
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