ロールキャベツは好きですか?

佐藤さんの言葉にホッと肩をなでおろし、瞳を閉じる。

瞼裏に真っ赤な鮮血が浮かぶ。

私の母が弟を妊娠中に切迫流産になったことがあった。

パニックになった私はとりあえず父に連絡を取り、汚れた母の下着をお湯で洗った。
目に飛び込んだ母の下着を染めた真っ赤な色が脳内にくっきりと刻まれていて、流産の文字を聞くたびに思い出されるのだ。

「そう……無事でよかった。ひどい出血だったでしょう?」

「ええ。出血に気づいたときには、私まだ妊娠知らなくて……生理にしては出血量が多いし、あまりにもお腹が痛くて……」

大変でした、と彼女は苦笑する。
そして無意識なのか意図的なのかは知らないけれど、お腹に……子宮のあるあたりに手を置いた。

それだけで、アシスタントは自分の後輩ではなく、ひとりの"おかあさん"に見える。
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