ロールキャベツは好きですか?

彼女がいなくなれば、またドタバタする。

新しいアシスタントへの引き継ぎやら、その子との呼吸合わせにまた悩む。
しかも、引き継ぎまでの間、あまり佐藤さんに無理はさせられない。

一度切迫流産になった人は、二度目も考えられる。

ううー。大変だ。

しかし、私はそんな考えもろとも、意識の片隅に押しやり、また笑顔を貼り付けた。

「そうね。早めに、退職しなさい。今は子供が1番大切なときだもの。無理は禁物。そのうち、つわりもひどくなるかもしれないしね。

休みたいときは素直に言うこと。仕事がどうのって考えなくていいから。それぐらい私がどうにかする」

佐藤さんは優秀なアシストだった。
失うのは痛い。

だけど、そんな弱音を吐くと彼女は無理をしてしまう。だから吐けない。

子供が産める女性には、産みたいと思っている女性には、全力で応援したい。

私の言葉に、佐藤さんの顔から緊張が取れていくことを感じた。
みるみる安堵が彼女を包む。

「ありがとうございます!渡邊主任!」

彼女の笑顔を見たら、私がいくらでも無理をしようと思った。

「あ、産まれたら一度くらい抱っこさせてよ?私、子供大好きなんだから」

「もちろんです!一度と言わず何度でも抱っこして上げてください!!」
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